fiction

99.98%くらいは本当のこと且つ作りばなし

8/21の午睡

 少し悲しい夢をみた。

 午睡の中でなんとなくこれはどこかで見たことがある夢だと思っていた。たまにシリーズものだったり過去に見たものとまったく同じだったりする夢を見る。これはどちらかというと怖い夢の類で、このあとの展開をなんとなく思いだしては時間が進むのを恐れ、どうか違う方向に向かいますようにと願っていた。

 ある街に男の子がいた。実年齢がわからないので便宜上男の子というが精神的に大人びている子だ。かつて見た夢では彼が怖い出来事の中心的人物だった。しかし彼は以前よりも穏やかで理知的で物悲しい雰囲気を漂わせている。それに言動も異なっていた。詳しい経緯は思い出せないが、彼と夢の中のわたしは互いが互いにとって大事な存在だと確認しあっていた。

 今回はともに穏やかに暮らせるのではないか、そう期待しはじめた頃、彼が昔起こったことについて語ってくれた。かつて街におそろしいことが起こり、それを退けるために街の人々が行った儀式についてだ。強いまじないには強いまじないで返すということなのだろう。詳細はとても書けないけど、人が多く傷つく、目を覆いたくなるような叫びたくなるような儀式だった。

 ある日、夜のはじめのころの時間帯に、彼はより強いまじないを完成させようと動き出した。わたしはそこでこの夢がわたしが恐れていた展開と同じ道を行くのだと気づく。ただ以前の夢とは違って、出来事の中心的人物だった彼がどうして行動したかの理由を理解した。彼は街の人々が行ったことの責任や後悔を、自分のより強いまじないでもって肯定し昇華しようとしていたのだ。そうすることで儀式で人を傷つけた街の人々の苦しみが、意味あるものになり良いものになると考えていた。どうしてと問うた時に彼が浮かべた表情は、きっとあの儀式がなければ彼はこの手段を選ばなかっただろうことを伝えていた。救われる誰かがいるから、為されねばならない。これからする行いがおぞましいことは理解していて苦しく辛いけど、そうせずにはいられず、そうすることで彼自身も安堵できる。ひとつの笑みに悲しみと安らぎが薄く重なり合っていた。

 いかないでほしいと願ったとき、わたしは夢から覚めた。あの夢を見続けたときその後どうなるかは想像するに難くない。だから目が覚めた瞬間、あれ以上彼が人を傷つける場面を見なくてよかったことに安心した。そしてもう誰かを傷つけることを肯定しないでほしいと願った。傷つける苦しみ悲しみがわかるならどこまでもそれを厭うてほしい。でなければ果てには彼が深く傷つくだろう。わたしはそれを許容したくなかった。

 わたしが悪夢を見るのは少々寝すぎたときと暑苦しい時だ。今はこれ以上眠らないでいられるように冷たい水を飲み頭を冷やしながらこの文を書いている。現実ではないとはわかっているけど、悲しい気持ちになるのはもう充分すぎる。